二重生活

2016/07/05 シネ・リーブル梅田
5/10

もったいない

ホント もったいなぁーーい

ここまで優れた尾行劇を演出しておきながら
バレた途端 うってかわって
全く別のクソ映画を
繋ぎ合わせたような展開のまま
クソエンディングを迎えてしまう
最悪の形を見せられてしまった

本当に同じ奴が演出したのか!?
というほどの変わりよう

それほどまでに
尾行がバレるまでの流れが
素晴らしすぎるんですわ

あぁーーー
途中退場したらよかったホンマ

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冒頭の情事ね
(門脇麦)と卓也(菅田将暉)
ちょっと唐突なんで
その意味合いを探りつつ
先行きを見守る観客である我々
なんとなく日々同じように
始まり終わってるのかなぁ
なんていう気だるい空気で
珠がタバコに火をつけベランダへ
そこで地上での家族の動きをキャッチ
もしかしたらこれも
毎日目にする光景なのかもしれない
という表情で
ふわふわぁーと彼らに付き合ってみる
距離といい角度といい
「団地」の冒頭を想起してしまうんだけど
画面が予感させる未来は全く違っている

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やがて行われるであろう
尾行の瞬間を胸に秘めながら
このシーンに接すると特に
なにやらただならぬ不測の事態が
聞こえぬ鼓動となって
やがて来るシーンをこちらに思い描かせてしまう
妙な説得力さえ持ち合わせていることに
気づく間もなく もうそこには
篠原(リリー・フランキー)
ちょこんと座っていて
予告編通り 尾行を推しつつ
珠の受け答えなど意に介さぬ彼の手元が
大小の円を紙に描き始め
集合体でも脳内の現前化でもないその図像が
珠の似顔絵だったのかもしれない
と気づくにはさほど時間を要せず
まん丸のメガネの奥に見え隠れする
アニメのような目ん玉と
首元で恥ずかしげに内側に隠れる毛先たち
の協力もあって
水槽という四角いフレーム内で
限界を感じながらなびき続けるクラゲが
最も近いのかもしれない
円(マル)であることを頑なにやめないその形姿が
本屋で探偵本を物色してると 目の前に
今朝ベランダから見てた男
石坂(長谷川博己)が突っ立ってるのを
目撃する事が偶然であろうはずもなく
彼が作家と部下を置いてその場から退散した途端
考えるより先に珠の両脚が
その後を追ってしまっていたのも
必然という他なく
このあまりに潔い行動開始プログラムが
「すでに事件は始まっている」
という映画的躍動感をも知らぬ間に画面に組み込み
ドギマギしながら券売機に向かい
パニクる震えを隠しもせず改札を通過し
消えたかもしれぬ石坂の姿をホームで追う
ダサダサファッション少女の唯一無二の強みは
どれほど掻き乱されようが
いっつも円(マル)であり続けること
だと知ってか知らずか
フォーカスアウトの様相で
彼女の視野に入ってくるスーツ姿の男
その名も 不倫は文化 さっきの石坂さん

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「太陽にほえろ!」などで見られた
気づかれない方がどうかしてる近さにまでは
到達しない慎ましく控える距離と
珠の執拗な目線配りによる一部始終が
「フォロー・ミー」とはまったく別種の
“ファンタジー”に到達するための
映画的戦略の一部と化しています

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棒切れのように垂直に立つ石坂と
その一本の線を見ては逸らすを繰り返す
まるいまんまの珠
この絶妙なコントラストを
まるで彼女の感情そのものであるかのような
微かに揺れるカメラワークで魅せる妙

そしてこれまた
微妙な軽さと物わかりの良さという振れで
バッチグーのタイミングで挿入される
「殺人の追憶」岩代太郎のスコア

そこに添えられる
何度でも言うぞ珠のダサい下半身ファッションが
説得力を持ってしまうアンサンブル

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もぉここまで魅せてもらうと あとは
いったいこの映画の帰着とはいかなるものなのか
という「宇宙戦争」の時にも感じた
先走り的興味をそそられるんですが
こんなもんじゃぁーない
凄くないコレ? っていうシーン
まだまだ続くわけです

 

石坂には見えてるはずのない
テーブル下の素足で誘いにかかる愛人を
ギリギリの距離にあるカフェ席で
あたふたと伏し目がちに逸せつつも
やっぱガン見してる珠

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そして やっぱアレっしょ
石坂と愛人(篠原ゆき子)による
ビルの谷間のカラミつきを
通り過ぎたら引き返し何度も見返す
珠のじっとりとした濡れ具合
そのあまりの距離の近さに
こっちがドギマギしてしまう大胆さ
それまで奥に隠されていたエロティシズムが
ここで一気に前面へ躍り出
これが後々 石坂の唇を奪うという行為
に繋がるわけですな

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女性作家と石坂が打ち合わせする喫茶店の
木目調の仕切りに守られてるという
錯覚に陥ってるに違いない
珠がとる距離が示す「油断」も
「覗き」という倒錯性へ傾斜する
彼女の内面の描写として
とても理にかなったものですし

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水族館の四角いフレーム内で泳ぐ
イカの目ん玉は明らかに
「実は 見られている」
という警鐘でもあり

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洗車中だった石坂が愛人からの電話を車内でとり
それを目撃してしまった階段途中の妻(河井青葉)
植木鉢を両手に呆然と立ち尽くす光景を
ベランダからじぃーっと見やる珠の視線とは
「裏窓」をもろに意識した
目撃される距離によって活かされる
サイレント劇の再現でもあるわけで

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あるいは
席が空いたと見るや
レストランへ単独潜入し
これまた危険極まりない距離から
石坂と愛人の動向を見守ろうとする珠
驚くべきは
喧嘩別れした愛人が立ち去る出入り口へ
カメラが振られると なんと道路向こうに
幼い子供を連れて棒立ちした妻が
じっとこちらを向いてる姿が現れるという
まぎれもない第一級のホラーショットよ!

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なんじゃこりゃぁー!?
凄すぎるぞ「二重霊活」!!

このズバ抜けた地縛感覚
河井青葉の顔そのものを
画面にはっきり提示してこなかったワケが
ここに来てようやく腑に落ち
その天才的な計略性に
まんまとハマった気持ち良さったらないぜ
コンチクショーめぇー!!!
唖然とするしかない旦那に子供を託すことで
彼の動きを封じてしまう妻の機転も素晴らしい

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ホテルに単独乗り込んだ妻が
フロントに旦那と愛人の名を告げ
今すぐここへ突き出せ!
と言わんばかりの勢いのその向こう
足音を忍ばせる早足で
そそくさとロビーを横切る愛人の姿を捉えた
「ファイヤーフォックス」イーストウッドしか
もはや想起しえない圧巻の距離感!

であるなら 珠よ
お前はあの時
シャワー室から颯爽と現れた救世主を
目撃してしまった博士と妻のように
銃殺されるべきではなかったか?
今思えば
映画としてそれが最善ではなかったか と

夢か?
俺はまた夢を見せられてるのか?
起きたら全部終わってるのか??

頬をつねっても夢から覚めることなく
映画は引き続き流れている
珠が何者かに撃ち殺される画もなく
愛人がロシア語の指示で操縦する
マッハ5のタクシーを空に放つVFXも
登場しない

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救急車のサイレン音
立ち上がろうと動かしたイスが
卓也のそれとぶつかるのも気にせず
階下へ走る珠
自殺未遂の妻を見送る石坂と子供
「娘さん よかったら預かりますよ」
と声をかける春日(烏丸せつこ)
冒頭近く
メールボックスへのチラシ配布シーンから
正しさを振りかざす嫌味なババアという
実にいい塩梅にポイントを押さえた
パイルドライバーになっている
ゴミ置場から石坂家をじっと見上げる珠に
思うほど追求を仕掛けてこないが故の不気味さも
「ヴィジット」かよ! と見紛うほどの
インパクトを持ち得てるし
時折インサートされる防犯カメラの映像が
明らかに春日の視線でもあるにもかかわらず
その彼女の姿を一切登場させず
あたかもカメラシステムそのものが
意志を持ってしまったかのように
演出されている点も特筆モノ

そしてこの救急車搬送のシーンで初めて
石坂と珠の関係が
「見られてた」「気づかれた」
へと瞬時に変換される
突然なだれ込むカタルシス
とでも言うんでしょうか
この 見つめ合ってから1秒も必要としない認識
「バットマン(1989)」
後部座席で顔を上げたジョーカーと
閉まったばかりの車窓に映り込む
ブルース・ウェインの
ただ唸るしかないタイミングの視線劇さえ
彷彿とさせてくれます

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しかし・・・
この感情のピークを境に
ここまでピーンと維持してきたテンションが
面白いくらい崩壊し始めます
それはもぉ
付き合い始めるまでの緊張感が
プッツリと切れたカップルのようでもあり
結婚してから途端にセックスレスになった
夫婦のようでもあります

今度は逆に
石坂に尾行されて捕まってしまう珠が
隙見て駅構内を逃げまくり
石坂の両手が閉まった列車のドアを叩く
くだりは決して悪くないし
余命2ヶ月のメモ書き上に
ぐるぐると何重にも
円を描き続ける篠原の病理が
「私を尾行してくれ」という願いに
やがて転化されるアイデアも
しっかりした伏線のおかげで
ちゃんと活きてるんだけど

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これら以外
そこから後はもうグズグズで
いったい何やってんだか
本当に同じ人間が演出したのか?
と疑いたくなるレベルにまで急降下

いったい何を見せられてんだ? と
怒りに近い感情までもが
顔を覗かせそうになるラブホまでのくだり
論文に使うな/使っていい
愛してしまった父の友人の死
空っぽを埋める作業
なんか分からないモヤモヤ
etc・・・
石坂に「陳腐だな」と言わせることで
メタ化したところで
取り返しのつく話ではもはやない
地獄の底まで陳腐さまみれ
その上
珠にメソ泣き演技までさせちゃってる

ええーーーッ!? て なるわなコレ

意味わかんねぇマジで
ってこのことよ

湯入れて自分が食うつもりだった
カップヌードルを
帰ってきた珠に差し出すっていうのは
とってもいいんだけど
その後2人でジュルジュル麺をすすり合いながら
交わす会話のなんと内容の薄っぺらいことよ
卓也への映画的ツッコミ具合がグラグラなのに
その歯をまだなんとか治療しようと
躍起になってるのね

無駄ですから
珠と卓也の関係性自体がペラッペラなのに
すすり合う音階のポリフォニーで
なんとか誤魔化し切れると思う
浅はかさですよ 単に
辛くなるのは見てるこちら側も同じですから
ほんとカットして欲しいこういうの

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あと
実は嫁じゃなかった
っていう西田尚美のくだりね
じき亡くなる母のために
篠原が代行嫁を頼んでおいた
っていうのも
それが母のためだけでもなかった
っていう流れも悪くないと思う
たださ どう転んでもこれ
後づけ感が否めない歪さなのよね
石坂と珠の尾行劇があまりに優秀すぎたせいで
何がどうなっても興味が湧かないし
何ならまるっぽ削除したって
だーれも怒らないよきっと
先述の喫茶店で
石坂にキツい言われ方してた女性作家
丸ごとこの章削れないか? って言われてた
まさにあのまんまのこと
今作の監督に言いたいですよ私

なんで126分なんて
上映時間になってんだこの野郎
少なくとも15分は削れるだろこれ
ってね

仏壇前で結婚指輪外したその描写だけで
嫁のフリしてたっていうの
ちゃーんとわかりますから
なのにそのあとクドクド
「イニシエーション・ラブ」ばりの
アホっぷりで説明カット入れまくる
っていうさ

なんとかせぇーよこれホンマ
すんばらしかった尾行劇がぜーんぶモロに幻滅崩壊

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で 最後
何をやらかしやがったかというと

クソつまんねぇテロップ出し ですわ

 

なにあれ??

 

ダッさぁーー・・・

 

文枝師匠が椅子から転げ落ちる気持ち
改めて よぉーーーわかったわ

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