葛城事件

2016/07/01 梅田ブルク7
4/10

テレビで
質の良さげなドラマを見てたみたい

良くも悪くも
見終わった後の感想はこんなでした

テレビだってね
バカにしたもんじゃないですよ
面白いドラマ結構あると思います
目を覆いたくなるようなものも
多いですけど

是枝裕和の映画ってそうですよね
この前の「海よりもまだ深く」にしても
過去の日本映画がどうとか言う以前に
向田邦子であるとか
まずドラマ脚本ありき
みたいなスタイルだと思うんですよ
そこから周りのスタッフさんたちが
映画的に輝かせようとする っていう

ガチガチに日本映画観てきた人の意匠では
ちょっとないかなと

雨の降らせ方とか
夜間撮影とか
やっぱどこか隠しきれない弱々しい部分が
残っちゃったりしてる

でもそれらを一旦括弧に括ってみようと
こちらの態度を改めさせてくれるのが
やはり脚本の構成力であったり
セリフの妙であったりするわけです


今回の「葛城事件」なんですが
これも私の見解では
テレビドラマ的であります

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まずは脚本ありき
と言っていいんではないでしょうかね
その上で 映画化ということで
もともと舞台用だったものをアレンジし
役者陣も総入れ替えしてるんですが

どうなんでしょ
舞台との違いが全くわからないんで
憶測で喋るしかないんですが

まず星野(田中麗奈)
葛城家にあがってきて
(三浦友和)と ああだこうだと
会話が始まります
幸が一気に吹き飛んだ後の
台風一過のような空気感が
画面のあちらこちらから出てるわけで
これは非常にいいなと 思いました
が この導入部分
いかにもな舞台臭してません?
私の思い過ごしでしょうか?

鳴りっぱなしの電話に戸惑う星野
電話になんか出ないでいい
向こうからじきやってくるのを待つ
これが俺のやり方だ とほざく清

この前に示されるペンキ塗りもそう
後のスナックへと繋がってる鼻歌コキながら
やる気のない作業をしてるっていうのも
なんか発想も動きもあまりに当たり前すぎて
私 正直ちょっと戸惑ってました

「朝からピザかよ」
という長男 保(新井浩文)の台詞だけで
この時はまだ
全食ファストフードというしきたりに
この家族 まだ慣れてはいなかったのだ
と思わせ
また仕事辞めたのか と
次男の稔(若葉竜也)をなじりつつ
保のネクタイを褒めることで
自身の正当性を確保しようとする清と
まともに戦えないでいる
縮こまった伸子(南果歩)の一連を
畳み掛けることで
この箱の中の人間たちの仕組みとやらを
一気に提示してきます

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各人物の動きの乏しさは
部屋数はそこそこだが
それぞれに窮屈で
妙な圧迫感が全体を支配している故
と捉えていいでしょう
少し無造作に動けば
何かに当たってしまいそうな
その何かに当たるごとに
幸の数が丁寧に減らされてるかのような
何事かを予感させる薄暗さと
小ぶりだがソファは絶対必需品だ
という幻想に踊らされてる
酸素濃度がアベレージに達していないリビング
部屋ありきの
家具たちのサイズであり配置でしかない
その下のランクである住人たち
「庭はやっぱりいるだろう」という声が
購入前の清の口から聞こえてきそうな
やがて呪われる家

実際
家屋の全景ショットが現れた途端
おののいちゃうわけですね

ここ 普通の家じゃなさげだ って

「霊のうごめく家」ですよ まんま

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この画面の強度に
全てが打ち負かされちゃうわけです
皮肉にも「不幸なことに」

何かがおかしいって思いませんでした?

風水的にすべてが狂ってるとか
そういう感覚を浮上させるに足る不気味さです
ここに固執する清は
この家に呪われているんですよ
ここから出て別の場所に住めば
家族はやり直せたかもしれない

だが 彼はそうしなかった

それくらい説得力のある佇まいです

ただ その強烈な説得力によって
家屋以外のものが萎縮してしまって
ただのおまけにしか見えない
という事態に近い状態になってるんですね
「不幸なことに」

スナックでジジイ3人が
縮こまってしまってる画は象徴的です
画面内で動きがあるのは
カラオケで歌う清だけです
口を動かすだけで座ったままの星野も同様
スナックというありきたりな風景が
一瞬たりとも異化されることなく
物語は次に進んでしまう

面会室での星野と稔の会話劇が
一向につまらないのは
想像の範疇を全く超えてこない
いらぬ礼儀正しさのせいです

圧倒的な家屋の存在感には全く及ばない
ショボいセリフと演技合戦

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あの家屋では
稔が冷蔵庫を開けるただそれだけの動作で
辺り一帯に
霊魂たちが出没していたではないですか
監督 大丈夫です
少なくとも4体は確認済みです

死刑制度を支持する奴らは
死刑にする勢いの星野が
テレポーテーションしてきた
ペラッペラの宇宙人にしか見えないのは
そこに至る思想的背景が
何ら語られていないからではなく
そういった通常仕込まれる
バックグラウンドの喪失感などを
今さら問題にしているのでもなく
顔だけ作ってきて
演技が追いついていないせいでも
もちろんないですし
ただ 自身のセックスの話を
ペラペラと吐露しているように見せかける
嘘っぽさとハッタリの下手さ加減だけは
映画的に成功しているという意味で
やはり ぜーんぶあの家が放つ
呪いのせいなのです

車椅子生活になった
オチの時系列スッ飛ばしカナブン女 伸子の顔に
全く疲労感も悲壮感もないのは
メイク係のせいでも
南果歩のワガママによるものでもなく

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菓子パンをかじり
クロスワードパズルに目を落とし
吸わなかったはずのタバコに火をつけ
戻って長い吸い殻を拾い上げる
「情けなさ」を画に描いたような
凡庸極まりない一連の発想力にとどめを刺すのが
玄関に現れた子供の声掛けであるというのも
問題とするにはもはや手遅れで

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ボヤを発見し
電話する手を止めて
玄関ドアを開ける清の目の前に
突如現れる稔の姿
までは良かったものの
コンビニへ行ってたという
嘘かホンマかどうでもいいセリフの後
消防車の音すら曖昧なまま
ボヤ自体がうやむやにされているのも

横寝する伸子の背後に添い寝する清が
そのまま夫婦間レイプへ突入するシーンなど
果たして必要だっただろうか
「やっぱり私 あなたのことキライです」
と言わせる為だけの
インスタントな設定に思えてならないのも

20年通ってるのはテメエの勝手だバカヤロウ清が
中華料理屋でモンスタークレーマー化する内容の
なんとも普通すぎる流れとセリフとリアクションに
絶望すら感じる私がただの変人なのか皆の衆
ちょっと良かったのは
妊婦の前で清が平気でタバコに火をつけるのを
目の当たりにしても
なーんも言えない嫁の両親の顔だけなのも

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地下通路での稔くん人生一発逆転無差別殺人時の
周囲の人物たちが
スマホで発信しようとしない違和感と
彼らの逃げる動きの段取り臭さが気になって
何もかもが夢オチに見えてしまう不幸が
「ディストラクション・ベイビーズ」の凄さを
改めて知らしめる結果になってしまい
もういい加減面倒臭いので
サバイバルナイフに言及する気など失せてますし

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そうだそうだ
せっかく妊婦というネタがあるのに
素直に産ませるだけで何ら活用しないのは
映画的に断罪しても罪にならないのでは?
だって「ヒメアノ〜ル」の森田なら
躊躇なくイッちゃってるでしょ
これ遂行することによって
妊婦の前でタバコを吸ってた清の行動が
ずっともっと活きてくるわけでしょ?

ま 今さらいいけどもう

ていうか
ある事件がベースにあれど
実話じゃなくって
フィクションだよねこれ?

なんでもっと弾けないの?

結果が提示され
だらだらだらだら
それらしい原因の描写がある
これやるんなら何か一発
突き抜けちゃわないと
脚本家志望の人間なら
誰でも考えつきそうなコンテンツの羅列じゃ
どうしようもないよ

かと思うと
星野のキャラに関しては
原因らしきものが
ついに最後までひた隠しにされてる

後にも先にも
家屋の存在感が凄すぎるのねぇやっぱ

やはり 単に 呪い なのかも

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ラスト直前
枝が折れちゃって首吊り失敗するのも
読めちゃうじゃんか
なのにここも何だかダラダラ長ったらしいし
「死刑にしないで生きて罪を償わせてください」
って清自身のセリフで
ご丁寧にフリがあるわけだから
稔との相似性に稔以上に嫌悪感を抱いてた清が
映画的に素直にそのまま死んでいいわけないし

もっともっと即物的に描写しなきゃダメよ

親父の店を継いでただ座ってるだけの金物屋
儲けを出すために
何らかの努力をしようなんて微塵も考えず
動きの鈍いシャッターを
ただひたすら毎朝開けるだけ
家に帰ると
そんな自分にそっくりな生活を送る次男が
嫁と付かず離れずイチャついてる
汚い臭いモノは見ようとしない人間心理に従い
自分が思う以上に長男を彼の前で持ち上げ
プレッシャーで押し潰そうと毎日試みるも
その行為全てが自分へと跳ね返ってきて
自分の首を絞めることになってしまい
気づけばこの家を買った当初の意気込みは
今ではすっかり淀み切った屋内の空気に絡め取られ
できれば何もかもを見ずにおく毎日であればな と
今日もママチャリで坂を登る

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無差別殺人を真似るかのように
リビングやダイニングの事物たちを
コテンパンに潰しにかかる清はなぜ
星野へのレイプを中断したのか

田中麗奈の事務所から
NGが出てたかどうかはともかく
あそこはやはり どんなに拒まれようが
なんなら殺す勢いでやり切るべきではなかったか

結局 最後の最後まで
星野は宇宙人のままでしたね
「人間じゃない!」と清に食らわすそのセリフが
軽すぎて宙に浮いたまま
またもテレポーテーションで姿を消す

嘘臭さしかない星野の体内に入り込んだ後
掃除機に繋がれたままのコードで
清に首吊り自殺大失敗を演じさせることこそ
最高のクソにもなれないクズ野郎が主役の
この映画のフィニッシュに相応しい
“態度”であると思うんですが
いかがなもんでっしゃろかいな?

 

伸子と稔の居場所を突き止めた保が
清にそのことを連絡
なのにのこのこと2人の住居へお邪魔して
「早く逃げないと親父が来る」
なんてことを言い出し始める
一体何がしたいのこいつ?
ってなるシーンだけど
これなんですよ「リアル」って

自覚症状のないまま
全く矛盾した行動をしている
ってのが
我々が生きる 現実 じゃないですか

やがて最後の晩餐の話に及び
3人ともが
それぞれの感情の揺れで
死を意識し始めてることを示唆してくる

いいシーンなんだけど でもここ
「霊のうごめく家」じゃないんだよねぇ

包丁を手にした清は
呪いが徐々に解かれたかのようにへたり込み
「何か作ってくれ
出前でもいいから
朝からなんも食ってねぇんだ」
と弱音を吐く

やっぱり 何もかも
原因はあの家なんですよ きっと

みなさん
変な気配がしたら
迷わず引っ越しましょう

 

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