海よりもまだ深く

2016/05/22 布施ラインシネマ
8/10

これは身につまされるなぁ って方
けっこういるんじゃないですか?

なんて他人事みたいに言ってますけど

私こそ どストライクでした

なんで映画でまたこんなものわざわざ
観せられなきゃならねぇんだよ
の連続でしたわ(笑)

と同時

面白くて面白くて
完全に中へ入り込んでました

久々に味わいましたよ
こういうアンビバレントな感覚

20代30代で鑑賞済みのあなた
50代になってから
もう一度観直してみなさい

スッゴイことになるから

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良多(阿部寛)ねぇ〜

このあまりに完璧な演技プラン
文句のつけようがないから
逆に観てて辛いのだよ
でも面白すぎて目を背けられない
けどこの人 実は
自分とタメだと知ってるんで
また辛くなってくる

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(樹木希林)ねぇ〜

怖ぇーわもぉ
ここまでうまく立ち回られると
非の打ち所のない「あるある」を
自身のキャラにブチ込んで
おまけにシェイクしてくるもんだから
完全に中身まで化けちまってるわけさ
そう 化け物だよ
化け物が飛んでる蝶々指さして
擬人化してんだよ
だから 歩いても 歩いても
良多との相性抜群すぎて
またまた辛くなってくる

後半なんて
モスバーガー我慢しすぎて
腹ペコだった良多が
調子こいて食いまくったせいで
服に付いちまった
カレーうどんのしぶきを
この母さん 迷うことなく
ツバ付けて拭こうとするんだぜ

「おかんとマー君」かよ!

やめろお前らもぉー!!

って 何度か叫びそうになった
動きも声も神がかってるからねこの人
注意しな 俺と同世代
その場で死にたくなってくるから

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白石響子(真木よう子)かぁ〜

この人 「最高の離婚」
何度も魅せてくれてた 軽蔑のまなこ
どMにはタマンネぇーんですよありゃ
なのに
恋人(小澤征悦)から
良多の小説アマゾンで買って読んだよ
って言われた途端
表情が脆くも崩壊しちまうんだよ
かと思わせといて真顔に戻って俺を殴れ!
もっとぉー!!もっとぉー!!!

恋人の口から出てくる
あの情けない感想もリアルだよねぇ
何も言ってないのと同じってことは
読んでません と同義だから

「あなたと人生ゲームなんて
悪い冗談だわ」
このセリフ 私も言われたことあります!
ゾクゾクってしましたぜ
悶え苦しませて殴り殺してください

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白石真悟(吉澤太陽)の佇まいや口調と
響子から出てる空気が
見事なアンサンブルなんだよね
聞こえない音楽聴かされてるみたいな
並んで歩いてるだけで
どこからともなく流れてくるその旋律が
親子以外のなにものでもない
なんていう生半可な説得力を
飛び越えてきそうな妙な迫力にまで
達してたような気がしたよ

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腹黒さを秘めた姉(小林聡美)
映画内における演技力にはぶったまげた
母のへそくりの話を
見てるこっちが心配になるほど
あまりに淡々と良多に打ち明けるんで
あぁーこの人思ってたより賢くないんだな
なんて高を括ってたらどうだアレ
案の定その話にあった場所へ行った良多が
ストッキングに包まれたへそくり
探し当てたと思ったら
中を開けてビックリ
「残念でした 姉より」
だってさ
この瞬間 ダークな駆け引きを
長年にわたってやってきた
姉弟の構図がビシッ!と決まるっていう
素晴らしい構成力だよ

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息子の親権を持てない良多に
アンドロイドみたいに
くっついて仕事してる町田(池松壮亮)
拒否反応見せながらも競輪場では金を恵み
浮気素行調査では
グルになって裏金をせしめる彼が
良多にとっている距離感を
はっきり示すのが
「あんたみたいな大人にだけは
なりたくないですよ」って
50代のオッさんが
高校生男子に言われちまってる横で
思わず笑ってしまうあの瞬間ですよね
つまりここ 本物の息子なら
決して笑ったりしないだろう ということ
側から見ると
まるで本物の親子みたいに見えさせていた
2人の偽装の膜
思うように実の息子と会えない
もどかしさを背負ってる良多 と
彼のような実の父と
距離を置いているのだろう町田
「キッド」でのような関係が
もはや不可能な時代に生きていることを
自覚するこの2人は
共同作業で貼り付けていったその膜を
剥がしてはまた貼り付け という
気のないルーティンのような作業を
何度も繰り返してるんでしょう

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おそらく亡き父が無料配布してた
うちの1つを読んだのであろう
仁井田(橋爪功)の口から
たどたどしく出てくる
良多の小説への感想が
当たり障りのない社交辞令
と化してしまってる理由が
ヴァイオリンの名手になり損ねたらしい
彼の娘の不意を突く
たったワンショットの登場によって
緩やかだが明確になり始め
メディアからの出演依頼が
自分にも過去にはあったと
多少照れも含みつつ話す仁井田が
それを頑なに拒み続けた理由が
後に出てくる
良多へのコミック本原作執筆依頼の
拒絶反応とも繋がり
なりたくなかった大人に
なってしまっている現実を
未だ受け入れられずにいる“未熟”を
きっと「無人の食卓」から
読み取ったに違いないことが
ズバリ仄めかされるのです

「何があっても魂だけは売るものか」
と言い続けたあの時代
そして今 彼はきっと
「魂」とはいったい何だったのか? と
自問自答し続ける
“未熟”という名の奈落から
少しでも顔を出してみようと
もがいているに違いありません

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休日のはずが突然会社へ姿を現し
普段とは微妙に異なる負の空気を
ゆっくりと時間をかけて醸し出し始める
探偵事務所のボス(リリー・フランキー)

 元々なんとなく目も笑ってない
→目以外も完全に笑ってない
→いつの間にか口調も笑ってない
→上半身に1つも笑いがない
→立ち上がって良太に歩み寄り
→クソヤバく横へ座ってしまう

「凶悪」の彼 寸前です
オカン大好き人種 こういう人結構多い
嘘を見破ったことを見破られない術を
7通り以上知っている元刑事の探偵屋さん
お見事っす

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見事といえば 撮影と美術

まぁー なんという狭さなんでしょう

団地内撮影はこれがキーワードですね

如何にせせこましい空間であることを
観るものに感じさせるか

距離感を忘却したにわか息子が
少し後退しただけで
ガラスを割ってしまう
窮屈なベランダから始まり
不相応だろ って思わせるほどの
大っきい冷蔵庫をあえて選び
一体どうやって部屋まで運んだんだ
と思わせつつ
そのドアを開けるたびに
姉を前屈みに沈ませ
あるいは
ちょっと大きなラーメン屋なら
これくらいの寸胴鍋あるぞ
ってサイズの浴槽に付着しまくった
夢のような黄ばみや黒ずみが
まっくろくろすけ伝説の信憑性を高め
テーブルを前に座る良多と
畳に尻もちつく響子と真悟との
高低差を逆手にとった狭小性の強調

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そして極めつけは やはり
あの防水CDラジオの存在でしょう
今時あんなデカい代物売ってるんだぁ
という「驚き」は
あの部屋に限っては 存在 しません

パソコンやスマホなど
今まで1度として見たことがない
ことにしてしまってるあの空間では
アマゾンという商標を
聞いたことなんかない
とするのは必然であり
ブラウン管にたまたま映し出された
テレビショッピングでの商品購入のみが
世界マーケットの歯車に乗っかった
安心便利な方法だと思い込むことによって
少々高かろうがデカかろうが
比較対象品に目を背けた段階で
各自の独占禁止法は
もぉそれはユルユルになってるのであり
つまりは
欲しい=買い なのであるからして
この防水シリーズも今そこにあるわけで
そのデザインからして
半身で取り組んだに違いない
音の出るおもちゃが
乱雑なテーブル上で
アイテムの仲間入りをしていることにより
部屋のニオイさえもが
こちらまで伝わってきそうな効果を
生み出している事実に
我々は驚きを禁じえない という仕掛けに
なってるということであります

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台風1つで
家族だったメンバーを一時的に復活させ
どうなるか見てみようか っていう
ちょっとした実験映画
と言えるかもしんないですね
さてその実験結果とはいかに
ってなるんですが
見た目は これまで通り
また会う約束をしてバイバイするだけです
つまりは これが結果ではないということ
ここで言う実験結果とは すなわち
そこにたどり着くまでの
「過程」にこそあったのだ
という結論になるのですね

台風が通り過ぎた晴れた朝
階段を降りて団地の外へ出てくる
母不在の3人のショットが
壮絶に素晴らしいんだわコレが!

映画内で完全に「空気」の入れ替えが
行われてるんですよ
陽光によって立ち上がる蒸気が
見えてるかのような錯覚さえ
引き起こさせてくれます

慎吾が何やら走って紙切れを拾う

宝くじじゃなかったぁ

そう 振り返れば
「じゃなかった」の繰り返しだったと
台風の後のせっかくの静けさを壊さぬように
映画はつぶやきかけてくるのです

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ただ すみません

ここまでベタ褒めしといて恐縮ですが
あくまで私的に この後
ちょっと気に入らない箇所が顔を出します

質屋にて店主(ミッキー・カーチス)から
亡き父が自分の小説を
タダで近所に配りまくってたって話を
良多が聞かされるんですけど

いりますかねこの逸話?

危ういバランスで成り立ってた「作品」が
一気に安定しちゃうんですよこのせいで
繰り返すと
せっかく築き上げてきた 危ういバランス が
安定しちゃうことで崩壊してしまう ってこと
父のそういう面をさらけ出した途端
良太にもその「いい人成分」が
注入されてしまって
良太側にあった 危うさ にも
支障をきたしてしまってるってことです

もしかしたら
好みの問題になるのかもしれませんが
私はちょっとNGですねこの展開は

というのも
実は30万円の価値があった硯(すずり)を
使ってたんだあの親父が!?
っていう流れの上でのコレですし
そのちょっと前には
母から親父のシャツを
何気に渡されることによって
遺品のほとんどを捨てたって言ってたのは
真っ赤な嘘なんじゃねぇか
なんてことになって
あの親父って 実は・・・
ってことになりかけてた節が
あったからです

盛りすぎて袋破けちゃった
みたいな感じかな

 

いやいや でもでも
ここまで完璧に近い演出を
魅せてくれてんだから
私の言うことなんて
この際どうでもいいです

十分満足させてくれました

こんなにまで
キツイなぁ〜と思いつつ
ムチャクチャに面白かった映画体験
ホント貴重ですから

主題歌だけじゃなかったんだね
ハナレグミの楽曲たちも
映画と見事に共鳴してました
あのメロディー 私なりに解釈すると
時折の自嘲の行間 です(笑)

それと
カンヌで賞なんか獲らなくて
本当に良かった
これ 私の持論ですけど
賞って 作品のダイナミズムを
残酷なまでに貶めるものだって
常々思ってますから

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ラストショット
良太がアウトしてからも
ずうっと残ってる
あっちこっち向いて散らばった
壊れた傘の数々

最後の最後まで
台風のエキスを搾り取ってやるぞ
っていうね

あの傘の1つに「吹き出し」つけたら
非難轟々だろうなぁ

「こんなはずじゃなかった」って

 

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