女が眠る時

2016/03/08 MOVIX堺
5/10

どういう方向へ持って行きたいのかは
分かってるつもりなんだけど
いかんせん 演出面の持久力不足というか
あるいは 誤った生真面目さというか
どちらにせよ
何事かを誤魔化しにかかることに躍起で
取り繕うその姿が言いたくないが痛々しく
「スラム・ダンス」で魅せたキレの良さはやはり
あの時代が要請したものであったのかと
まずはダサい脚本を呪うことから始めることにします

この構成ね
他のレビューとかでも言われてんだけど

全部 綾(小山田サユリ)が仕組んだことでした
で考えたら 残酷なくらい辻褄が合っちゃうのね

佐原(ビートたけし)と美樹(忽那汐里)
目を向けるように健二(西島秀俊)へ仕向けたのは
そもそも彼女だし

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留守にした途端すぐまた戻ってくるという不自然さで
そのまま服を脱ぎだす美樹を
ベッドの下で息を潜めてガン見する健二のくだりもそう

健二が美樹にかまけて
結局約束通り駅へ迎えに行かなくても
綾はそのことについて
大して怒ってるようには見えなかったし

その彼女は佐原を伴ってエレベーターの中へ消えるし

ラスト
ディナーシーンで「気付けよいい加減」と
言わんばかりの背中を見せつけてくる佐原は
追ってきた健二に微笑をプレゼントするし

ここまでピタリとパズルがはまるってことは
謎の居酒屋店主(リリー・フランキー)
グルであることなど自明だし

唯一の誤算は 健二が掃除のおばちゃんに
見つかってしまったことなんだけど
そのことで刑事(新井浩文)
疑いの目を向けられることで
健二にとってはより現実感が増し
綾にとってはそれが逆に好都合となったわけで

どこまでを策略通りとし
どこからをハプニングとして
設定してるつもりなのかはともかく
種明かししてしまえば何のことはない
中学生でも今時書かない恥ずかしいプロットを
そうじゃないんですよ実は と
手を替え品を替え小気味良くズラして
主人公の妄想と現実のラインを曖昧にするという
これまた手垢だらけのプランBを同時進行させ
最後に謎解きをしなかっただけの
単なる時代錯誤ミステリーの出来損ないのまま
エンドロールを迎えた
ちょっと不幸な代物なんです

 

健二がその場に居合わせないシーン
佐原と美樹のカミソリのくだりであるとかは
全て健二の妄想ではなかろうか
という様相を呈すればいいわけだし
その為には
健二が2人に絡むシーンでさえ妄想ではなかろうか
というあやふやさを加味すればいいわけで

突然ハイヤーに乗り込んでくる美樹の化粧顔が
綾に似てきていることからも明らかなように
その顔を選択したのは他の誰でもない
綾であるということ
つまり健二の“好み”を知り尽くしている女性が
演出を担当することで
これまで起こったことにストレスなく彼を溶け込ませ
これから起こるであろう不気味さへも
怖さに勝る好奇心で挑むきっかけ作りをしており

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それを如実に示してるのが
出会って間もない健二と居酒屋店主の会話に
突然ブッ込まれるタイツとストッキングの違い であり
デニールって何のことか知ってる?」
という店主の問いに
「・・・いえ・・・知りません」と
振り幅限界の間合いで返答する健二の態度が実は
相当なストッキングフェチであることは明らかである
とする見解を妥当とするものであるし
もしや40〜60デニールの説明中に勃起してたかもしれない
などと考えるこちらの態度は
うろたえながら店を後にする彼を見るに
決してオーバーとも言えず
これを綾があらかじめ用意したシナリオ通りだと解釈するなら
これまでの健二の著作の中に
彼の“好み”があからさまに出ていたことは
想像に難くない と同時に
これら全てを彼の妄想へシフトさせることも可能である
という方法論を採っていることを踏まえると
いたってズルい 逃げ場を作った脚本であり
それにまんまと乗っかった演出でもある と
言えるのではないか
などと考えている今日この頃
皆さんいかがお過ごしでしょうか?
サイトを一新してからの挨拶が遅れておりました

どうか今後ともよろしくお願いいたします

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売れっ子作家の妻のままでいたいという綾の策略なのか
それとも何もかもは単に健二の妄想でしかないのか
あるいは画面で提示される以上のものは実は何もないという
教訓めいた啓蒙映画であるのか

その何処へにでも着地できるようにと
“ズラし”で逃げ場を作るウェイン・ワン

健二が初めて佐原に話しかける夜のプールサイド
いくら呼びかけてもガン無視なんで
退散しようとした健二に
ようやく話しかけてくる佐原
「ちょっと待ちな ここ座りなよ」

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その後の 健二を映したままでの柔い水しぶきの音
ショットが変わると
佐原が両足を水につけてバチャバチャやっており
血溜まりのイメージが明白な真っ赤な靴下らしきものが
水中でゆらゆら浮遊しているという画

朝食ビュッフェであろうか
不意に現れる佐原と美樹
「ここ いいですか?」
健二が既に佐原と面識があることを
初めて知ったかのように振る舞う綾が
くどくどと喋る間
彼女の方にではなく
上の空に違いない健二を捉え続ける
ヌーヴェルヴァーグ的カメラとリンクするかのように
部屋のベランダ窓越しからの海を
気味悪いほどゴダール的になぞらえるだけでは我慢ならず
砂浜での佐原と美樹のロングショットを
「HANA-BI」にさえ似せてしまう自己完結スタイル

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美樹をハイヤーに突然乗り込ませ
そこから突然飛び出させる
の幾度かの繰り返しで
“ヌーヴェルヴァーグ”の残骸を弄ぶも
未だ拭えぬ私事でしかない病理から
一歩も踏み出せずにいる現実以上のモノが
ついに現出することもなく

「困った時の 〜 頼み」
とでもマニュアルに書かれているのか
バカでも分かるように青色だらけにした
プールサイドだけではまだまだ物足らないので
ブルーライトをそこかしこで使いつつ
カメラも律儀に傾け
時折アップで示される健二の無精ヒゲで
お茶を濁すしかないという始末

 

ここまでクソミソに言っておきながらなんですが

新井浩文がいいんですよぉ
ポリネシアン・セックスを実践するかのように
以前吸ってたのを見透かして
タバコを勧めてみたり
身分や才能の差をさりげなく放り込んで
相手を徐々に気持ちよくさせて
西島秀俊の殻をゆっくりと剥いで行き
ここというタイミングで
掃除のおばちゃんの目撃談へ落してゆく
その瞬間の眼光が漫画で描かれたかのように
キリッと光り
「嘘ついてる人ほど
信じてください って言うんですよねぇ」
なんてハッタリを
心理操作に詳しいはずの小説家相手に言ってのける
そりゃ西島くん 挙動不審にもなります

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彼以上に凄いのがリリー・フランキー
いったい何の商売してるのか見当もつかない佇まい
見ず知らずの人間の汗を気遣ってタオルを差し出す
ポイントのズレ具合
先述のストッキング会話からの
「なんで聞くのかの理由を言いなよ」
という飛躍言語の連鎖がもたらす“怖さ”
半径2メートル以上は寄せ付けない
懲り固まった自分理論を自分論理で解説しながら
ガラスのコップをちっちゃなテーブルへ
丁寧に並べていく突発性殺人犯的所作
急な階段上にある2階へ導かれる西島くん
私なら行かないです
「凶悪」での彼よりよっぽど恐ろしいから

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彼らに比べ
ビートたけしが案の定弱いのは否めない
「劇場版 MOZU」でもそうだったねぇ
顔も体つきも言うことないんだけど
ちょっと声高にセリフ言う場合にボロが出ちゃう
まぁ
綾に雇われた単なるしがない詐欺師だと想定すると
あの甲高くなってしまう声も納得いくんだけど・・・

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あと 最後の受賞祝いのディナーシーン
あそこはなかなか良かったと思います
それまでの海辺の寒々しい画面から青を排除し
一転して黒を基調とした暖色系へ様変わりするのね
都心へ戻って来たんだから当然と言えばそうなんだけど
綾のお腹の張り具合を見るまでもなく
瞬時に時間経過を示せているのよ
シャンパンの色をダークブラウンにしてるのも納得だし
ちょっと「キャロル」を彷彿とさせる・・・
なんて言ったら 褒めすぎかな?

色々言いましたが

やっぱちょっと 行儀良すぎかな ってこと

せっかくの「なんでもあり」設定
この方法で推し進めるんなら
もっと色んなこと出来るはずだし
やらなきゃ面白くなんないのね
なのに誰に遠慮してるのか
自分の作った枠から
一歩も出て来れていないという窮屈な演出
アナクロニズムで勝負かけるんなら
ダイナミックレンジが小さすぎるというか
冒険心の欠片もないというか
ある意味 器に見合ってるというか
だから大成出来ねぇんだよテメーは
なんて言ったら失礼なんで
口が裂けても・・・ですけど

トッド・ヘインズほどの技量はないんだから
次回作はそこをより深く踏まえて
キチガイだと人から指さされるほどの
強烈な一発を期待したいんですが

 

無理かぁ〜

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